前職から2020年のベイシア入社のきっかけになったのは、コロナ禍によって、小売業が社会に与えるインパクトの大きさを実感したことでした。同時に、ベイシア会長の土屋裕雅さんとお会いして、ベイシアがテクノロジーによって何を成し遂げたいのか、その世界観に心から共感したのです。テクノロジーと小売の親和性を確信し、転籍を決めました。

ベイシアに入社し、マーケティング本部長、デジタル開発本部長としてまず着手したのが、アプリ、ネットスーパーなどお客様向けのシステム内製化でした。昨今、内製化がトレンドになっていますが、大切なのは「内製化」そのものではなく、「内製化によって何を成し遂げたいか」です。

従来、ベイシアもベンダー依存のシステム開発を続けてきましたが、経営理念を実現するためのツールであるシステムを外部に任せると、どうしても根本的価値との乖離が生じてしまいます。しかし、内製化によってシステムの「早い、安い、うまい」が実現できれば、ベイシアの「For the Custmers」が「かゆいところに手が届く」ように形にしていけるのです。

今、システム内製化は「商の工業化」フェーズに入っています。ベイシア創業以来の経営理念である「商の工業化」により、経験と勘で勝負しがちな商業を「工業化」できれば、他社よりも「良いものを安く」提供しつつ確実に売上を伸ばして、ベイシアのビジネスを成長させ続けることができます。

例えば、生鮮三品＋惣菜は生産プロセスそのものが工業化製品と比べてイレギュラーな要素を多く含みますし、業務フローの大部分が手作業で行われてきたため、システム化が難しいとされてきました。しかし私たちが考えているのは、弁当、惣菜の製造も工業製品を製造するように、売上を予測し、材料の実在庫確認・発注をし、生産計画へ落とし込み、個々の社員の業務情報データに基づきシフト管理表を作成をするなどしてシステム化することなのです。

前職までのキャリアを通じて学んだのは、リソースがあるからやるのではなく、まず志やビジョンを持ち、それを実現するために「ヒト・モノ・カネ」を集めるということです。デジタル分野でも同じことがいえます。重要なのは、ビジョンであり、会社の価値やミッションとリンクさせて、上流工程の企画と要件定義をしっかりと作り込むことです。

同時にプロジェクトはチームで進めていきますから、メンバーがやりがいを感じながらコミットできているかにも敏感でありたいと思っています。現在、IT部門の責任者として「サーバントリーダーシップ」を発揮し、メンバーが困っていることをできるだけ感じ取り、寄り添って、働きやすい環境を整えるのが私の役割だと考えています。「軍隊型」で引っ張るのではなく、五感を使って、メンバーの困りごとに敏感になる「イルカ型リーダーシップ」を目指しています。

また、ベイシアにはトップレベルのエンジニアたちが集まっていますが、最強のチームになるためには「HRT」が必要だと思っています。「Humble（謙虚さ）」「Respect（お互いへの尊重）」「Trsut（相手に対する信頼）」の頭文字をとった「HRT」があればこそ、エンジニアの心理的安全性が担保され、チャレンジしやすいカルチャーが醸成されるのです。